さんざし「山査子」の効果・さんざしの生理活性

    
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さんざしの生理活性サンザシの赤色色素および生理活性  椙山女学園大学 名誉教授 並木和子

T.緒言  

 サンザシは中国を原産とするバラ科の落葉樹サンザの果実で、深紅色のちょうど "小リンゴ"の

 ような果実である。中国では、今から約400年前に完成した 有名な薬物書「本草綱目」に既にサ

 ンザシの薬理効果として、酸素類の働きによる消化の促進血管拡張などの作用による血圧降下

 作用や抗菌作用をもつなどが記されている。 しかし、漢方で使用する生薬は、現在のような医学、

 薬学、をはじめ化学的な研究が進歩していない時代からの薬であるため、成分構成等は不明のま

 ま、ひたすらどんな効果があり、どんな害を及ぼすかを中心に論じ使用されてきたものである。

 そして、西洋の薬物書では、薬物を動物、植物、鉱物と素の素材の原料から分類してるが、生薬で

 は上薬(命を養う不老長寿の薬は副作用がない)、下薬(治療薬で病を治すが、毒も多いので長く

 使用しない)と分類しており、サンザシは上薬となっている。 近年、これらの漢方薬についても、有

 効成分や人体への影響などの化学的な解明が進みつつあるが未だ不明のものも多いのが現状

 である。 現代中国でのサンザシの利用は、"小リンゴ"のような果実の熟した物を天日乾燥したも 

 のを蓄えておき、「本草綱目」に記された効能に沿って、刻んで煎じて服用したり、生の果実を使っ

 た赤色ゼリーを薬膳として、または生果実に砂糖シロップをかけたお菓子などが普通の利用方法

 であった。

 ところが、最近サンザシの果実から抽出して作られた缶ジュースが出回り、健康飲料として人気

 をめている。これはスポーツ選手にサンザシの エキスを与えたところ、パワーアップし好成績を

 示したとのことが理由といわれている。 

 日本においてのサンザシは、白い花をつけ、赤い実のなる低木として、庭園で栽植されているが薬

 用などへの利用はなかった。しかし、最近中国の健康飲料に注目しサンザシエキスを配合したスポ

 ーツドリンクが作られゴルフ場などで販売されたこともあるが、あまり馴染みのあるものではない。

 食品化学研究室においては、一昨年中国産のサンザシ冷凍品を多量に入手したことから、未だ不

 明点の多いサンザシの化学成分や生理活性の解明を目指し、昨年は一般成分、脂肪酸組成、ア

 ミノ酸、遊離糖類などについての検討を行い、報告している。

 本研究では第一のテーマとしてまず目に付く鮮やかな赤色の果皮の色素の解明を行い、次にサン

 シ果実の生理活性を、近年注目されている植物食品の機能性と言う立場での検討を行い、二、

 三の知見が得られたので報告する。


Y.要約

400年以上も昔より中国で漢方薬の上薬として安心して使用され、また薬膳材料としても珍重され

きたサンザシについて、化学的な成分組成およびその化学的構造の解明を行い、さらに漢方薬と

しての歴史をもつサンザシの生理活性を、近年注目されている機能性について調べ、それらの機能

に寄が予測される活性成分についての検討を行い、以下のような結果が得られた。

 


1. サンザシの果皮色素の構造について
 

@ サンザシの果皮の美しい赤色色素は

         シアニジン−3−(6−マロニル)ガラクトシド

 

         シアニジン−3−ガラクトシド 

であることが確認された。

 

A ガラクト−スにマロン酸の付いたシアニジン−3−(6−マロニル)ガラクトシドは2%  TFA50%

  CH ON抽出で得られた。 

  従来の一般的な塩酸酸性メタノールによるアントシアニン抽出方法によっては、

  シアニジン−3−(6−マロニル)ガラクトシドはマロン酸のエステル化や加水分解により

  シアニジン−3−ガラクトシドに変化するものと考えられた。

A  サンザシと同じバラ科の植物であるリンゴの赤色種の果皮にシアニジン−3−(6−マロニル)

   ガラクトシドの存在を確認した。 これは今までに報告されていない。

    

2. サンザシの生理活性について

@ 抗酸化活性  

   サンザシ全果のジュースは、ロダン鉄法で強い抗酸化性をみとめた。  活性因子としては、果皮

   の色素シアニジン−3−ガラクトシドが、 100μMでα−トコフェロールと同程度の抗酸化活性

   を示し、この活性は、酸化下で中性の約8〜5倍の活性を持つことが認められた。

   生体系に近い抗酸化試験法としてのウサギ赤血球膜を基質としたTBA法においてもアントシア

   ニン色素の抗酸化性が認められた。果皮を除いた果実部分にも抗酸化性があり、活性は総ポ

   リフェノール量に相関しており、この活性成分をメタノール抽出後HPLCで検討した結果、カテキ

   ン酸およびエラグ酸などのポリフェノール類の活性への寄与が認められた。

   サンザシのメタノール抽出物は、クエン酸の添加で抗酸化性が 相乗的に上昇することを認めた

   。

   サンザシには、多量のクエン酸を含有されるため、全果ジュースの強い 抗酸化活性には、この

   酸と色素の相互作用も関与しているものと考えられた。

 

A 活性酸素消去機能

   サンザシ全果ジュースは、X−XOD系で発生するO2に対して強い消去活性を示した。この活性

   要因をアントアニン色素、ポリフェノール類について検討したが、活性への寄与度はあまり大

   きくないものと考えられ、全果ジュースの活性には、サンザシに多量に含まれるビタミンCおよび

   トコフェロール類の寄与が考えられた。

 

B血小板凝集抑制作用

   サンザシ全果ジュースは、強い血小板凝集抑制作用を示した。この活性に寄与する活性成分の

   検索を目的 として、アントシアニン色素及びその他のポリフェノール化合物の標品について血小

   板凝集抑制作用を調べたところ、色素、ポリフェノール化合物類はいずれも強い活性を示し、中

   でもカテキン類は最も強い抑制作用を示した。 次に、7種類の溶媒抽出物について検討したとこ

   ろ、メタノール抽出物がさも強い活性を示した。このメ タノール抽出画分には、ポリフェノール類

   がほとんど抽出されてきており、ポリフェノール類の血小板凝 集抑制への寄与が裏付けられた

   。

   更に、クロマトグラフィー分画物の活性を調べ、これらの活性を示す画 分のHPLC分析で活性物

   質の追求を行なった結果、エピガロカテキン及びカテキンなどのカテキン類が確認 された。果皮

   抽出物では、色素アントシアニンの血小板凝集抑制効果も認められたが、カテキンよりは寄与

   が少ないものと思われた。しかし、活性を示した画分の中にはまだ成分の確認出来ないものも

   あり、今後更に検討の余地があると考えられた。


   並木和子< なみき かずこ >教授のプロフィール

      1948年         東邦女子薬専・卒(現・東邦大学薬学部)

      1962年         農学博士(東京大学)

      1948 〜 1966年  理化学研究所・研究員(生化学第2研究室)

      1966 〜 1998年  椙山女学園大学 生活科学部・食品栄養学科教授

           現         椙山女学園大学・名誉教授